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〜デビューCD「BEYOND INTERSECTION」ドラマーのこと〜


秋ですね〜。街を歩く女性もブーツ姿が多くなりました。
「1回仕事によばれはじめるとあとはもう雪だるま式に次々と仕事が増えるよ」と、5月から伴奏の仕事をはじめた学校で言われたとき「はあ。そうだといいですね」と言ったけど、新学期9月は新しいピアノの生徒がなんと14人!出会いが集中した月です。ビザ申請のための弁護士代や帰国費用と、臨時費がかかる外国生活は不安定なので、依頼がある限り働く意欲です。


a0094202_6412119.jpgさて、秋になると昨年の今頃このプロジェクトのお手伝いをしたことを思い出す。この人を知ってもう15年ほどになるが、いつも「すごいなあ」と思わされるネタに尽きない。

アップタウン「Smoke」でベースのDezron Douglass以外のCDメンバー全員を揃えた彼の最新リーダーアルバム「The Next Phase」(左記をクリック)の6月のリリースライブは、大成功だった。NYのクラブではチャージが高い方のライブだったが、ボルチモアに住むビブラフォンのWarren Wolf、カリフォルニアに住むEric Reedも集めて3セット入れ替え制で満席。音楽内容もとても濃かった。

大体、彼は今、サイドマンとして最も売れている。

亡くなる直前までは巨匠ハンク・ジョーンズ、今は巨匠シダー・ウォルトンやギターのPeter Bernsteinのレギュラーメンバーでしょっちゅう海外に行っている。NYに居るときはリンカーンセンターが経営するDizzy's Club Coca ColaかVillage Vanguard, Blue Note, Birdlandなどに週間出演し、昼間はレコーディングや、ニュースクールやシカゴにあるノース・ウエスタン大学でのレッスンをこなしている。ほかにも歌のErnestin Andersonや、McCoy Tyner, Sonny Rollins, Dizzy Gillespie All Starsのレギュラードラムの代理など、自分のバンドなんてやらなくても本当に充分いそがしい。私がNew Yorkに来る少し前までは、6年間ロイ・ハーグロフのクインテットとRH Factorの両方のレギュラーメンバーで、ハービー・ハンコック、故マイケル・ブレッカー、ロイの「Directions to the Music」ツアーではジョニ・ミッチェルのツアーを優先したブライアン・ブレイド(それもすごいね)の替わりに、数回の公演以外はすべてウィリーがドラムを担当していた。

それでもコンスタントに自分のプロジェクトのことを考え、曲を書いているところがすばらしい。

なぜこの人がニューヨークでこんなにサクセスフルなのか、ときどき考える。
もちろん、ドラムはすばらしい。まちがいない。でもほかにもすばらしいドラムというのはいる。
この人は「人付き合いがうまい」のではなく、ほんとに「いい人」だ。華やかな演奏とは裏腹に意外と静かな人で、普段から人の意見をとてもよく聞く。自分と意見が食い違っていても、よほど音楽的に問題がない限りはほかの人の意見を尊重して優先する。でもできないことはかならず「それはこうこうこういう理由で僕はちがうと思うから、無理」という。そういう性格なのだ。自分の演奏スタイルは決して譲らない。昔ケイ(赤城)さんのバンドに居た頃はかなり自由なスタイルだったように記憶しているが、Straight Swingに拘る今の姿勢は誘われる仕事の幅を限定するだろう。でも逆にその信念が、プロデュース業である質の高いWJ3 Recordsレーベルのブランドイメージ定着を自然に導いてきている。

要するに、この人は元々人と音楽に対する尊重の気持ちがとてもつよい。「音楽に」という人は多いが、自己表現芸術なだけに「人と音楽に」というジャズミュージシャンは少ない(もちろんチームワークである職業柄、みなさんいい仕事に呼ばれるほど自分を抑えるようになるのですが)。自分ができることに対する自尊心があるがエゴがない。ここがむずかしい。中途半端なプライドがないから人に嫉妬しない。その上、ドラムが抜群にうまく、初見もつよい。そんな人と働くのが嫌という人がいるわけがない。

彼の演奏にあこがれてジャズをはじめた私だが、アーティストとして山はまだまだ高く、プロフェッショナルとしての奥は深いなあ、と思わされる日々です。






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by Katsuko Tanaka  たなかかつこ

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