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コミュニケーション

NYに来て1年目を迎え、間に10年のブランクがあるもののアメリカに住んで通算5年が過ぎた。なのにいまだに人間関係で相手の考えがよくわからない時がある。相談したアメリカ人の友人の答えは大抵同じだ。「あ〜!そんなこと?そんなもんだよ、気にしないでかつこは自分の事だけやってたらいいから」「でも!彼はなんでこんな事言ったのかな。○○やから?」「うん、○○ってのも確かにそうだ。でももう1つの理由は、あいつは変わった奴だからさ」はあ、、、なんでもそれで済ませられたら、めっちゃ楽ですよね。ちなみにこの○○には、人種問題やギャラの条件など、ちょっと普段話しづらい内容が入る。

NYCでは、目的がはっきりしている人がよその国や州から来て高い家賃を払って生活している。だから他人がどう思ってるのかなんかいちいち気に病んでる暇はない。フリーランスのミュージシャン達は特にそうだ。でもちゃんと礼儀があり思いやりも厚い。要するにコミュニケーション能力が高い。自分の求めるもの、望むラインがはっきりしていて、言われたその時にその場で解決し後腐れがない。それができない人は「変わった奴」と言われている。それだけやりたい事に集中して時間をかけ日々前進してよりいい仕事を取るという考えが常識なのだろう。

2週間ほど前、木曜日にRoy Hargrove、金曜はLA時代の旧友でベースのDanton Boller、火曜にベースのJoe Sanders、水曜にテナーのGreg Tardyと演奏する濃い週があった。彼らは演奏で私にコミュニケーションを取って来る。ものすごい力だ。技術じゃない、意志というか精神というか信念というか生き方というか。私を怖じ気ささず、潜在的なものを引き出してくれるようなリラックスさせる妙な力もある。最近は特にJoeと演奏できるのがたのしみだ。日本ではトランペットの嶋本高之さんから毎回この手の創造的な緊張感をステージで感じていたが、ベースとピアノだからもっと近い所で何かを感じる。Royは誰と演奏しても演奏で自分の方向性にもっていける。学校で一緒に演奏できるAntonio Hartもそうだ。セッションでよく一緒になるボルチモア出身の26才若手ピアニストJoel Holmesや、Gerald Claytonもそう。前は「なんで?」と思っていたが、理由はいっぱいある。音楽を知れば知るほど、自分がどれだけ音楽を知らないのかということがわかる。

次の木曜はDanton Bollerの家へ遊びに行った。近年Royのバンドでのツアーが多かったので私がNYCに来てからまだ数回しか会っていなかった。彼のHDからCDの音源(mp3)をDVD6枚分コピーし、夜はまたRoyと演奏できた。金曜は広瀬未来くんと教会で演奏した後、同じく旧友のWillie Jones IIIにライブ招待してもらった。ああ。私は昔DantonやWillieの演奏をみてこんな風に自由に楽しくアンサンブルがしたいから、長年やっていたクラシックをやめてジャズに転向したんやったなあ、って原点に帰った。久々に私をお客にさせ、何年も前とまったく同じ感動を湧かせるWillieの演奏にコミュニケーション力を感じた。私もそういう演奏家でありたい。