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ギグ

先日、ドラムのJaimeo Brown(ジャメイオ・ブラウン)の仕事に誘ってもらった。NYには本当にすばらしいドラマーが多い。

Jaimeoとは、2年前の暑いある夏の日に知り合った。私の家の近くでは日本のお米は売っていないので、アップタウンに寄ったついでにクレオパトラズ・ニードルの隣のデリで米を買ったら、たむろしていたJoe Sanders(ジョー・サンダーズ)とTaylor Eigsti(テイラー・アイグスティ)に会い(ちなみに2人は元ルームメイト同士)、だらだらと30分くらい立ち話をした後ハーレムのSt. Nick's Pubにこれから行こう、という話になった。そこへちょうどJoeの友人のJaimeoがクレオから出て来て彼の車で4人でPubに行った。JoeとTaylorはPubでも外で30分くらい話した後結局演奏しないで帰っていった(この日はフットボールの試合を観に行った帰りでただ喋りたかっただけ)。せっかくだし帰る方向が同じなので、私は初対面のJaimeoと1曲演奏してから帰ることにした。エネルギッシュな演奏をする人という好印象がある。元々お米を買いに行っただけだがそんな縁でたまに仕事に誘ってもらうようになった。

ストレート・アヘッドのスイングスタイルのウィリーとはまったくタイプのちがうドラマーだけど共通点がある。それは自然な音楽の流れを大事にするということ。それに尽きるように思う。無理しない、はしゃがない、不要な自己顕示をしない。なのに(だから?)存在感がものすごく大きくエネルギーが満ちていてソウルフル。演奏後にものすごく充実感がある。もちろんリズム、グルーブ感、ダイナミクス、音色、テクニック、そしてハーモニーのセンスがすばらしい。

Jaimeoと演奏するときは、セッションでよくやる曲やロイがcallするタイプの曲はなく、ボビー・ハッチャーソン、モンク、ビル・エバンス、リッチー・バイラク、L.バーンスタイン、ウェイン・ショーター、H.ハンコックなどの名曲をさらう良い機会でもある。彼のオリジナル曲もすばらしく私の創造力の刺激になる。サックスのJD Allenとのデュオにシーケンサーを使ったかなり実験的な音楽をSmallsでやっていたのを観たが、大好評だった。本当にパワフルな音楽は聴衆を選ばないのだと思った。ジェリ・アレンにそのプロジェクトを気に入られ、ハーレムのアポロシアターで演奏してレーベルも付いてCDを出すことになったらしい。

伴奏の仕事で週に30〜40人くらいもの生徒をみていると、相手の良い点や弱点をいつも瞬時に分析している。それは仕事人としては充実しているが、自分の創造性のことだけを考えられる時間はとてもたのしかった。ミュージシャンというのはある意味身勝手であることが仕事の一部といえる職業だと思う。ニューヨークに来てから、毒気の強いそういう人達と接する毎日にウンザリしていた時期があったが、今ちょうどバランスが取れて来たようだ。よい共演者だと思う存分自由にさせてもらえ、危険な賭けに出るほど面白い音楽になる。

今月末は久々にDanton Bollerとデュオがある。とてもたのしみだ。昔馴染みの友達と久々に会って演奏してご飯が出てギャラをもらえる。ロイ・ハーグロフのバンドの元ベーシストなので、ロイから教えてもらった曲の数々を全部片っ端からやろうと思う。人気上昇中の女性アルト奏者、ティア・フラーさんとのデュオの仕事もたのしみだ。