今日は久しぶりにお休みだ!!厳密に言うと今日の演奏仕事を取り損ねた。ここ数週間、誰かレギュラーピアニストのサブ(代理)の仕事が連続で入っていて休みがなく、慣れない仕事の連続で生活のバランスを崩していたので、本日は料理もしない日にしよう!ときめてタイ料理とレッドベルベットケーキをテイクアウトしブログを更新中。
11/13(水)は若手ミュージシャンを集めて自分のカルテットでオリジナルや日本の曲をアレンジして演奏した。
毎回、自分のリーダーバンドの時には3分の1くらいあたらしい音楽内容を持って行ってサウンドを試すようにしている。自分が飽きるからだ。でもあたらしいものばかりやり過ぎても今度は余裕がなくなりストレスになる。関西時代に何度もリーダーバンドをやっていくうちに、その辺のバランスはわかってきたように思う。その時々で自分の興味もシフトする。日本に住んでいたときはニューヨークに住むことにあこがれていたので、ニューヨークらしいサウンドの曲を創っていた。この夏に作った曲はとても単純なコード進行のもので、最近仕事でよく行くゴスペル教会音楽の影響を受けている。日本に住んでいた頃はそういう曲にインスピレーションやスピリジュアリズムをさっぱり感じず接点がなかった。人のバンドで弾く機会はあってもいまいちピンと来ない音楽だった。ブルースもそうだ。いつも私のブルース演奏はなんだか噓くさいと思っていた。今はそういうコンプレックスはない。ブルースとジャズに関しては
ロイさま(ロイ・ハーグロヴ)とのセッションから得た体験が(良かったことも悪かったことも)今は骨身に染み渡っている。
話は戻るが、10月はPCの前に張り付いて200枚を超えるアーティストビザの書類作りをした。自分自身がアーティストなのに、仕事から帰ると毎日書類作成で練習する時間がない。本末転倒。はやく音楽に浸りたくてうずうずしていた。
書類を弁護士事務所に出した日、ご褒美にJimmy Heath Big Bandをブルーノートに観に行き、久々に音楽の素晴らしさを聴衆になって満喫してきた。(写真はクイーンズ・カレッジ大学院恩師のMichael Mossman[マイク・モスマン]から拝借。本番中にリードトランペットの席からよくそんなことする余裕あるな〜。)
Jimmy HeathのビッグバンドではLewis Nashがドラムだったが、アレンジを詳細に把握してショーを構成しているように感じた。管楽器のソロも、バックグラウンドがソロの最後のコーラスでどういうことを演奏するのかアイディアを予知したソロだと次へのつながりの盛り上がり効果が高かった。ビッグバンドではメンバー1人1人がそうして音楽の全体像を把握していると元々の音楽のもつエネルギーがかなり増幅されるように感じた。まるでクラシック音楽の交響曲のよう。テーマで1つのモチーフを膨らませたり複数の別のアイディアが出て来て交差したり、ソロの箇所はインプロビゼーションで、シャウトコーラスやエンディングは交響曲の最後の方ははじめのテーマで使ったアイディアをまた引っぱり出してきて全楽器を使って壮大に終わるイメージと重なる。ベートーヴェンの曲にはベートーヴェンのカラーがあるように、ジミー・ヒースのアレンジ&作曲にはすべてジミー・ヒース色が濃く溢れていてステキだった。簡潔に言うと知的でグルーブしててユーモラス。とてもたのしいライブ鑑賞の日でした。
Gene Jacksonが日本からブルックリンに戻っていて彼の家でのセッションに誘ってくれた。無駄話もなく1曲終わるとすぐ次へとどんどん時間内に曲をすすめていき、あっと言う間に時間が過ぎ去った。ベースは緊急手術したDwayne Burnoのピンチヒッターで8月にキタノで演奏してくれたGeorge DeLancyくんを誘った。ウィスコンシン州出身の骨太ベーシストだ。昔、Herbie Hancockのピアノトリオでジーンがドラムをたたいているライブ版(海賊版)の録音を友達にもらったことがあり、そのHerbieの「I Love You」のアレンジをよく関西のリーダーライブで演奏していたのでそのフメンを持って行った。もちろんジーンはどのようにたたいたかなんて忘れてるはずだが、やはり録音で何度も聴いていたジーンと同じだった。最近何度か共演していている信頼感もあって、奇妙なことに「こんなこと弾いたことないのになア」と思うことがスルスルと出て来た。
ミッドタウンでピアノトリオの仕事でベースのDwayne Burnoと1年ぶりに一緒に演奏したときにも、まさにそう感じた。思いがけないことが「弾けて」しまい自分の音楽が内側から自然に引き出される。Dwayneとは
去年キタノでWillie Jones IIIと演奏したときにもそれとまったく同じことが起こった。演奏中に心から「笑みがこぼれる」というのを体感した。ハーモニーもグルーヴもちょっと一線ちがう。本人のセンスや練習ももちろんあると思うし、音楽をとてもよく知っている。レコーディングをよく聴いていてそれを細かく覚えている上に自分の解釈でハーモニーのアレンジができる。
あの年代のミュージシャン(ロイ、アントニオ・ハート、ウィリー・ジョーンズ・III)に共通して言えることは、フメンをみない。フメンを渡すと「I don't need a chart. 」と、こんな有名な曲をフメンみないと俺が演奏できないなんて思わないでくれ!!という勢いでピシーっっ!!と言われると、友達だったり親しくてもとてもコワいです。DwayneもWillieも、私のオリジナル曲を1回テーマを演奏して1コーラスソロをやったら2回目からもう譜面はほとんど見ず3回目は見ていない。そうじゃないとダメだと昔ロイ様に言われたことがあるが、そんなことは現実的には無理だと思っていた。だが実際にこうして共演者が実行しているのを見て、それは努力すればできることで、巨匠に鍛えられてきたベテランの年代にとっては当たり前のことなのだと知った。
Dwayneとのギグはあっと言う間に終わってしまった。3セットしかなかったが最後の曲のときに「ああもうこれで終わりなのかあ...」と、4セット目もやりたいくらいだった。やはりあれくらい音楽を上から下から表から裏から自由自在に演奏できると、周囲のみんなをたのしくするのだなあととても勉強になって、ギャラももらって帰った。そういえば昔ロイさまが「誰にでも、そのバンドの音楽の方向性をガラっと変える力がある。1人1人に同じだけの力が(ロイさまだけではなく皆にも)ある」とシラフな真顔で言われたことがある。もう1つ、あの人達は自分の楽器の特性をよく知っていて楽器の演奏が上手い。それに「気付いて」はじめて最近、クラシック音楽をずっと勉強してきたことを貴重に思う。今もショパンのエチュードを5-6曲はウォームアップで弾くようにしている。
ドゥエインとの仕事の翌朝は、最近サブで行っているコンテンポラリー・ゴスペルのクワイヤーの伴奏の仕事だった。夜遅く終わる仕事がエキサイティングすぎるのと、翌朝の仕事に間にあうように早く起きれるか心配で寝付けない、という典型パターンだ。音楽がかわる頭の切り替えもいる。
このクワイヤーは素人の集まりなのにかなりレベルが高い。今までいろんな伴奏をしてきたが、ジュリアードに入れる子達よりもずっと音楽を覚える能力とほかの声部をきいてアンサンブルできる能力が高いしやる気も本気だ。コーラスの各声部を分析していくとまるでバッハの音楽だ。なぜsus7やMaj6, m7(b5)やdim7といった昨今ジャズでよく使うコードがでてきたのか、3声を分析して漸くその根本が心からわかった。ここはお金がないのでバンドではなくキーボード1本なのが残念だが、逆にキーボード1本でバンドの曲をどのように弾けるかという課題がある。ハモンドオルガンのサウンドも出せて便利だ。過去のリハーサル録音では、あまりにすばらしいピアニストがピアノ1本で伴奏しているのでクワイヤーのディレクターに一体誰か尋ねてみたらGreg Stamperという作曲者本人だった。なるほどー、こういう風にやるのか!と、いろいろ勉強になってたのしく演奏してきて、ギャラももらって帰った。そして今朝そのGreg Stamperさんから彼の教会で明日彼のサブでピアノを弾いてくれないか、と電話があった!ディレクターの推薦だったらしい。しかし残念ながら明日はすでに別の教会でのゴスペル演奏の仕事が決まっていた。とても残念だけど次回があることを期待しよう。
そんなワケで最近ゴスペル音楽のハーモニーがとても気に入って、それ風な曲を書いた。子供の頃親に連れられて教会に「行かされていた」アメリカ人のジャズメンにとっては「それが何か?」かもしれないが、日本人の私にとってはとても新鮮でワクワクしている。
それともう1つは、日本の曲を少しアレンジしてバンドで演奏した。それにはどうしてもStacy Dillardのソプラノサックスが必要だった。大体が思い通りのサウンドになって次回の案も浮かんだ。日本の曲は日本人には単純かもしれないが、アメリカ人のジャズメンにとってはとても新鮮でワクワクするらしい。
伴奏の仕事に行ったり、フルートの佐伯まゆちゃんの仕事に誘ってもらったり、それぞれ前向きな人達と関われるのも爽やかな時間だ。帰るとひたすらやりたい曲をメンバーにやってもらうためにフィナーレ(ソフトウェア)で各パート用の譜面を作る。演奏者が1、2回読めば覚えられるような完成度の高い譜面を作成するためには、どうすれば最もわかりやすいのかいつも考える。